DINER ( Web Magazine )

September 2017

2015年、もう一度知りたいポートランドのこと

category / Interview
( 2015/05/22 )

RE:TRIP TO PORTLAND

2014年、日本でブームとなった街と言えば、「ポートランド」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。特集が組まれた雑誌を片手に初めて海をわたった人もいれば、過熱するブームを冷静にとらえながらも「やっぱり好きな街だ」と、あらためてポートランドに足を運んだ人も多く見かけました。さて、2015年のポートランドはどうでしょう? 今さらと言わず「再入門」してみませんか?

能動的なトラベラーのためのガイドブック

日本でにわかに注目を浴びた街、ポートランド。そのブームの一端を担った書籍が、ここにあります。その名は、『TRUE PORTLAND the unofficial guide for creative people 創造都市ポートランドガイド』。

訪れるべきレストランやショップを420軒以上も紹介するというボリュームはもちろんのこと、サードウェーブコーヒー発祥の地であり、世界最多のブルワリーを持つクラフトビールの街であり、至るところでファーマーズマーケットが開催される美食都市であるポートランドのカルチャーを、現地の人々のリアルな声とともに伝えたその内容は、「旅行」ではなくあえて「旅」と言いたい……そんな街の暮らしに寄り添う能動的なトラベラーのためのガイドブックとして高く評価されました。

この度、2014年の発行から1年を経て『TRUE PORTLAND』の2015年版が刊行。前号であれほど多くの数を掲載したにもかかわらず、紹介されている店やスポットの内容は大きく刷新され、既に2014年版を読んだ人にも、また新たなポートランドの魅力を発見できる一冊として仕上がっています。しかしなぜ、ポートランドはこれほどまでに注目を浴びているのでしょうか?

掲載店舗も大きくリニューアルした2015年版のTRUE PORTLAND掲載店舗も大きくリニューアルした2015年版のTRUE PORTLAND

インディペンデントな感覚を大切にする街

2015年のポートランドについて、「ポートランドをまつり上げるつもりはないですが、相変わらずいい感じの街だな」と答えてくれたのは、書籍を編集したメディアサーフコミュニケーションズの堀江大祐さん。堀江さんにとってポートランドは、どう魅力的に映るのでしょう。

メディアサーフコミュニケーションズ 堀江大祐さんメディアサーフコミュニケーションズ 堀江大祐さん

「偶然が起こりやすい街。例えば、ナイキのような大きな企業に勤めている人も、ひとりで何かを作っている人も、大企業と個人だからといって隔たりがありません。特集の記事にも書いてあるのですが、ナイキはインディペンデントでやっている人の感覚を大切にしていて、自分たちの制作にフィードバックしています」

今回の『TRUE PORTLAND』ではナイキ、コロンビアといったポートランドを拠点にグローバル展開する企業のインタビューを巻頭で特集しています。日本では、投資家がどうだ、資金がどうだという話になりやすいインディペンデントな活動や起業について、「お金ではないところで物事が動いていくのはすごく素敵ですね」と、堀江さん。

運動が文化として根付く街には、スポーツブランドも多数運動が文化として根付く街には、スポーツブランドも多数

「ナイキほどの企業で、インディペンデントな感覚をフィードバックするサイクルがあるのはすごいと思うし、それがやりやすいのがポートランドなのかなって。もちろん、生活費が安いことも背景にあると思うんですけど。例えば趣味で石鹸をつくりたいと始めたことが大きくビジネスになったり、活版印刷を趣味でやっていたら、ポートランドのショップから依頼が来るようになったり。その活版印刷の人は、昼間はスタンプタウンコーヒーで働いて、夜は活版印刷で作品を作っているそうです。アイディアとクオリティが良ければ、なんでも仕事になっていく」


セントジョーンズの人気が上昇中

そんなポートランドでは、「いいもの」が話題になりやすいと言います。今年のトレンドとしては、これまで各自が作っていた工芸や作品を、まとめて見せるようなスポットも増えたそう。

「例えばマイナーなジャンルの音楽も街の人たちで発信しあったり、誰かのつくったクラフトを広めたり、お互いにサポートする姿勢があります。そのほか同じジャンルのレストランでも、シェフ同士の交流があり、誰かが忙しいと言えば別のレストランのトップシェフがその店に行って手伝う。競争じゃなく、助け合うところに価値があるんです」

2015年ならではのムーブメントを聞いたところ、「どこの街でも熱いエリアというのは常に変わっていくものだと思いますが、ノースポートランドにあるセントジョーンズという地域は、昔のアメリカの街並みが楽しめることで人気が出てきている」とのこと。

昔のアメリカの街並が楽しめると人気上昇中のセントジョーンズ昔のアメリカの街並が楽しめると人気上昇中のセントジョーンズ
Photo : Christine Dong

新しい形のアメリカンドリーム

そのほか今年感じたことを伺うと、「本当に自然が近い街だということにあらためて気付きました。どこに行っても、走っている人や犬を連れて散歩をしている人がいる。スポーツが生活の中に組み込まれて、カルチャーとして根付いていることを実感した」そうです。

「例えばDeparture Restraunt+Loungeのシェフのグレゴリーは、お店で働いて、そのまま飲みに行って、それでも朝は5時に起きて走る。その後にファーマーズマーケットに行って食材を見て、その日のメニューのイメージを膨らませて出勤する。そのバランスがすごくいいなって。日本だと、夜遊びしている人はあまりスポーツをしないというように、はっきりと分かれているじゃないですか。ポートランドでは、トレイルランが好きな人も、実はすごくお酒も好きだったりと、突き抜けて楽しんでいる人たちの比率が高い気がします。そんな人たちによって街の雰囲気が自然に形成されていて、言葉では言い表せない“街の感じ”が注目されていることもあると思います」

本づくりにも携わった人気シェフ、グレゴリーさん本づくりにも携わった人気シェフ、グレゴリーさん

「東京とは環境も異なるし、完全に魅力的だと思ってしまったらポートランドに住んでしまっていると思うから」と、ポートランドを取り巻く環境を冷静に見つめる堀江さんですが、「やっぱり、あの街はすごく大好きですけど」と振り返ります。

「それは具体的なことではなくて、誰かの家やオフィスに招待されたときに感じる行き届いた空間の作り方だったり、すごく高いものではなくても自分の好みのものでそろえていたり。そんな生活の空気感が、参考になるなと思っています。お金よりも自分にとっていい生活を手に入れるための夢をかなえられる場所なのかな。違った形のアメリカンドリームじゃないですけど」

取材はシェアオフィスMIDORI.so2にて取材はシェアオフィスMIDORI.so2にて

 

堀江大祐堀江大祐 メディアサーフコミュニケーションズ株式会社・取締役副社長。『TRUE PORTLAND』の編集ほか雑誌『NORAH』の発行、青山ファーマーズマーケットや青山パン祭りといったイベントの主催のほかシェアオフィスやフードカートが集うCOMMUNE246の運営などメディアやジャンルの幅を超えて活躍している。最近では世界のシガレットを取り扱うTobacco Standをオープン。

TRUE PORTLAND the unofficial guide for creative people 創造都市ポートランドガイド Annual 2015

TRUE PORTLAND the unofficial guide for creative people
創造都市ポートランドガイド Annual 2015

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発行人   黒崎輝男
発行元   BRIDGE LAB
発売元   メディアサーフコミュニケーションズ株式会社
公式サイト http://truepdx.com/

( about DINER )

「どこで、だれと、なにを食べようか?」

DINERは「食事の時間」をテーマにしたウェブマガジンです。2014年春、Food & Design Postというニュースサイトとしてスタート。2016年春のリニューアルを経て、現在は東京の飲食店取材を中心に活動しています。2017年春には、ノンアルコール飲料ブランド「SHE LAUGHS」も始めました。