DINER ( Web Magazine )

June 2017

サードウェーブコーヒーだけじゃない。
ポートランドのクラフトビール熱。

category / Interview
( 2015/05/27 )

RE:TRIP TO PORTLAND

これまで2回にわたり連載してきたポートランド特集も、いよいよ最終回。ポートランドが愛される理由を編集長の堀江大祐さんに聞いた第1回。2回目にはポートランドのシェフ、グレゴリーさんに最新のフードカルチャーについてインタビューを行いました。最終回は、サードウェーブコーヒーの発祥の地であり、世界最多のブルワリーを持つクラフトビールの街であるポートランドの「ドリンク」事情を探ってみることにします。

クラフトビールを作るブルワリーの数は世界一

ポートランドのドリンクと聞いて思い出すのは、やはり「サードウェーブコーヒー」というキーワードでしょうか。サードウェーブコーヒーの先駆けと言える有名店のスタンプタウンコーヒーロースターズや、前回のインタビューでシェフ、グレゴリーさんが教えてくれたコアヴァコーヒーなど、サードウェーブ発祥の地として有名店が多数存在しています。

でも、そんなコーヒーに負けないくらい、コミュニティの中心に位置しているドリンクがあります。それは「ビール」です。「ポートランドの人口は約60万人。世田谷区の人口が約87万人ですが、そんな小さな街の中で、現在58ものブルワリーがあるんですよ」と教えてくれたのは、『TRUE PORTLAND the unofficial guide for creative people 創造都市ポートランドガイド』のドリンクカテゴリーを担当したメディアサーフコミュニケーションズの田中佑資さん。

メディアサーフコミュニケーションズ 田中佑資さんメディアサーフコミュニケーションズ 田中佑資さん

「2014年版ではコーヒーのお店を多く取り上げたのですが、2015年版はお酒を意識してフィーチャーしています。ポートランドは、ひとつの都市の中にあるブルワリー数がなんと世界一。その理由の一つが、ポートランドは自家醸造が盛んで、アマチュアのブルワーがたくさんいるから。ホームブルワーから力をつけて独立したり、ブルワーとして醸造所に就職したり、キャリアを重ねている人も多いんです」

さらに興味深いのは、「ポートランド市がブルワリーを作りたいという人に対して投資をしている」という点。

「市がブルワリーマップというものを作っているのですが、近隣にブルワリーが無い地域はレッドゾーンとして赤くマッピングされているそう。そこにブルワリーを作りたいという人が現れたら、市が支援してくれる仕組みになっているんです」

話を伺った青山ファーマーズマーケット会場でもポートランドのビールが話を伺った青山ファーマーズマーケット会場でもポートランドのビールが

もちろん、ビールの醸造はポートランドでも免許制。それでも、ホームブルワリーの入口は日本よりずっと広く、「多くの人がビールを作るために切磋琢磨し、自然と人が育つ環境になっている」とのこと。

「市が投資をするくらい、ポートランドではコミュニティの中でビールが大事な役割を担っています。年配の方から家族連れ、仕事帰りの人まで、本当に幅広い年齢層の人がパブに集っているのです」


作っているすぐ横でビールを味わう空間づくり

「もともとビール好きではなかったのですが、ポートランドに行って俄然興味がわきました!」という田中さんに、『TRUE PORTLAND』の中から、特におすすめのお店をピックアップして教えてもらいました。

田中さんのおすすめ、ザ・コモンズブルワリー田中さんのおすすめ、ザ・コモンズブルワリー田中さんのおすすめ、ザ・コモンズブルワリー
Photo : Christine Dong

ひとつめのお店は、「ザ・コモンズブルワリー」。彼らのモットーは「Gather Around Beer」。「おいしいビールがあるところに人は集まる、ビールは人をつなぐということを信条に、会話を楽しみながら飲み続けられる、アルコール度数の高くないビールをつくっている」そうです。

「お店を切り盛りしているのは、マイケルとジョッシュという2人組。マイケルがブルワーで、ジョッシュがマーケティングを担当しています。面白いのは、ビールをつくる醸造所と、お客さんがビールを楽しむ場所の境目がないところ。作っているすぐ横でビールが飲めるんです」

確かに『TRUE PORTLAND』に掲載されている写真を見ると、広々とした空間に置かれたテーブルや樽の上で、上品なグラスに注がれたビールを楽しんでいる様子が垣間見えます。それでは、二つ目のおすすめはどちらでしょうか?

非営利のブルワリー、エクスノヴォブルーイング非営利のブルワリー、エクスノヴォブルーイング非営利のブルワリー、エクスノヴォブルーイング
Photo : Christine Dong

「非営利のブルワリー、エクスノヴォブルーイングも面白いですよ。ここは、経費を除いた利益をすべて寄付してしまうブルワリーです。かといって慈善事業に対する想いが熱過ぎるということもなく、純粋にいいビールが作りたい、それが誰かのためにもなるのだったら最高だという気持ちでやっているところ。もともとメーカーのエンジニアだったというオーナーのジョエルは、北欧に住んでいたブルワーにネットコミュニティを通して出会い、ポートランドに移住したブルワーが現在は醸造責任者になっているそうです」

ビール以外に目を向けると、オレゴンと言えば……そう、ワイン。もちろん、ポートランドでもおいしいワインが飲めます。「街の真ん中でワインの醸造をして提供している」というクーパーズホールも、そのひとつ。

30種類のワインが楽しめるクーパーズホール30種類のワインが楽しめるクーパーズホール30種類のワインが楽しめるクーパーズホール

「オリジナルのワイン20種類と、仕入れたワインが10種類。全部で30種類が味わえます。ここでも、ワインを作る場所とそれを味わう場所がとても近い。この距離感の近さは、日本では難しいスタイルですね。保健所の管理的な問題もあるし、これだけの広いスペースを借りようと思ったら、とんでもない家賃になってしまいます」

そのほか最近ではハーベストブルーイングというグルテンフリーのビールや、リンゴを原料にしたサイダーも人気。「小麦を一切とらない健康志向の人やお酒が飲めない人も、グルテンフリーのビールやサイダーを飲みながら楽しい時間を一緒に過ごす」のだそうです。

「面白かったのは、おいしいビールやワイン、コーヒーは水が大事だろうと注目して、どういう水を使っているのかをいろいろなところで聞いたのですが、どこで聞いても “いや、そのまま使っているよ?”って」

豊かな自然に囲まれた都市ポートランドでは、マウントフッドから流れ込むきれいな水をそのまま水道水として使っているそう。

「ああ、それが当たり前なんだなって。きれいな水があって、車で数十分の場所にいい素材の産地があって、広いスペースが安価に借りられる。そこにクラフトマンシップという職人意識がある地域だから、サードウェーブ発祥の街となり、世界一の数のブルワリーができる。そうやって文化が生まれたのでしょうね」

メディアサーフコミュニケーションズの仲間とともにメディアサーフコミュニケーションズの仲間とともに

田中佑資田中佑資 1985年生まれ。メディアサーフコミュニケーションズ株式会社に所属し、主に青山ファーマーズマーケットとCOMMUNE 246の企画と運営を担当。「いま(自分が)食べたいものを食べさせる」をモットーに農業や野菜について学ぶ男子野菜部のキャプテンも務める。『TRUE PORTLAND』では、主にドリンクカテゴリーの取材と編集を担当。

TRUE PORTLAND the unofficial guide for creative people 創造都市ポートランドガイド Annual 2015

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発行人   黒崎輝男
発行元   BRIDGE LAB
発売元   メディアサーフコミュニケーションズ株式会社
公式サイト http://truepdx.com/

( about DINER )

「どこで、だれと、なにを食べようか?」

DINERは「食事の時間」をテーマにしたウェブマガジンです。2014年春、Food & Design Postというニュースサイトとしてスタート。2016年春のリニューアルを経て、現在は東京の飲食店取材を中心に活動しています。2017年春には、ノンアルコール飲料ブランド「SHE LAUGHS」も始めました。