DINER ( Web Magazine )

July 2017

参宮橋のタルイベーカリーで、
“パン職人が素敵な理由”を聞いた朝

category / Interview
( 2015/10/13 )

タルイベーカリー

vol.4 / Tarui Bakery

「朝とパン」をテーマに、青山パン祭りを運営するBread Labさんとのコラボレーションでお届けしている特集「東京モーニング」。「パンと言えば朝でしょう?」という声も聞こえてきそうですが、そんな朝のパンをあらためて見つめることで、もっともっとみなさんの朝を素敵な時間に変えてみたいという試みです。今回は、参宮橋のタルイベーカリーさんにお邪魔しました。

タルイベーカリー

タルイベーカリーとLIFE son

参宮橋駅から徒歩数分。小さな飲食店が並ぶエリアに、ひときわ目を引く2軒の店舗が現れます。そのお店が、2012年にオープンしたタルイベーカリーとレストランのLIFE son。2つのお店は店内でつながり、春と秋の第3日曜には共同で朝食イベントを開催しています。

タルイベーカリー

朝は、9時からの営業。イートインはありませんが、お隣のLIFE sonでは朝の10時からコーヒースタンドがオープン。店先のオープンテラスで、買ったばかりのパンをいただく人の姿も見えます。

「物件はLIFEのオーナー、相場(正一郎)さんがジョギングしていたときに見つけ、一人でやるには大き過ぎるからと声をかけてくれました」と教えてくれたのは、オーナーの樽井勇人さん。ちょうど7~8年勤めた代々木上原のルヴァンから、独立を考えていたタイミングでのオファーだったそうです。

タルイベーカリー

店先で迎えてくれる看板には、パンを焼き上げたシェフの横顔が。「僕ではないのですが……」と、樽井さんは笑いますが、こちらのロゴはパピエラボの江藤公昭さんが、樽井さんの写真を見ながら描き上げたもの。木目調のタルイベーカリーと、差し色にブラックを効かせたLife sonの内装は、いずれもランドスケーププロダクツの仕事ですが、個性を出しつつも共通点を持った店舗が仲良く並んでいます。

タルイベーカリー

自家製酵母の“思い出す”香り

店に入ると、バゲットから人気のバナナブレッド、親しみやすいクリームパンや食パンまで、さまざまな表情のパンがカウンターに並んでいます。中でも朝のおすすめを樽井さんに聞いてみました。

「食パンの生地で丸めて、1日10個ほど作るイングリッシュマフィンがあるのですが、それに卵やハムを挟むだけでもいいですね。それから“ハードトースト”と呼んでいるのですが、食パンのような形をした山型のバゲット生地のパンもおすすめです。少し酸味があるのですが、癖がなくておいしい。気に入ってくださったお客様に“トマトとバジルとハムを挟むからもう少し大きくしてほしい”とリクエストをいただいて、オーダーで作ったこともありました」

タルイベーカリー

これらのパンを膨らませるために使う酵母は、ルヴァン時代に自ら起こして使い続けているもの。自然農法で育てたブドウからワインを作る岡本(英史)さんに誘われ、ブドウから酵母を起こして麦でつなぎ、丁寧に育てて7~8年になるそうです。

タルイベーカリー

「自家製酵母の発酵した香りを、もっと一般の人にも知ってもらいたくて」と、樽井さん。「ルヴァンの酵母は、麦でつないだ自家製酵母。その酵母を使ったパンは、1日経って袋を開けたときに独特の香りがします。それも強いインパクトがある香りではなくて、思い出すような香り。“あぁ、あの香り良かったな”と後からイメージで思い浮かべるような。それがルヴァンのパンだったと思うのですが、そんな自家製酵母のパンの香りと味を広く一般の人に知ってもらいたくて始めたんです」

クラシックで重くハードなルヴァンのパンに対して、「もう少し軽くしっとりと食べやすくて、分かりやすいものにしたい」というのが、樽井さんのパン。カウンターに置いてあったすべてのパンに、しっかりとポリシーが感じられました。

タルイベーカリー

パン職人のハート

最後に、Instagramにアップしている「パン屋の朝食」の写真が素敵だとお伝えしたところ、「スタッフが知り合いのパン屋さんでパンを買ってきてくれるので、嬉しくてついアップしてしまうんです」と、樽井さんは笑います。

タルイベーカリー

タルイベーカリー

「もちろん自分たちのパンも好きですが、ほかのお店も好き。パンが好きだと言えばそうなのですが、人が好きですね。自分がいたルヴァンも好きだし、近くだとカタネベーカリーの片根(大輔)さんや365日の杉窪(章匡)さん、それからパーラー江古田の原田(浩次)さん、ル・ルソールの清水(宣光)さん、好きな人ばかりです」

タルイベーカリー

ここで、特集の取材を続けて感じていた“パン屋さんはクリエイティブで素敵な人が多い”という感想を伝えると、「変人じゃないと、パン屋ってできないですよ。特に都内では(笑)」と、樽井さん。

「そうやってやり切っている人は、自然と集まりますよね。群れをなすのとは違って、同じところを見ているから自然と集まってきてしまう。大先輩ばかりです。みなさん愛が、すごいんですよ。何でこんなに優しくできるんだろうというくらい優しくて、ハートが熱くて、タフで、ものすごく真面目。先端を走っている人は、考え方が全く違います」

タルイベーカリー

それはパンに対する考え方なのかと聞くとそうではなく、「一番は、お客様に気持ちが向いていることです」とのお返事が。「お客様に喜んでいただいて、楽しく元気になってもらいたいという気持ちが伝わってくるのかな。おいしいものを作ることは大切ですが、それよりもせっかくお金を払って来てくれるのだから、楽しく元気になってもらいたい。それはルヴァンの甲田(幹夫)さんの信念でもありますし、先端を走っている人気のあるパン屋さんは、全員そういう気持ちを持っています」

タルイベーカリー

インタビューを終え、おすすめのハードトーストに人気のバナナブレッド、それからミルククリームサンドを本日の朝食に選びました。すると、渡された袋にはあのロゴマークが。樽井さんのハートとパンをリュックに入れて、軽やかな気持ちでお店を後にしました。袋を開けたときの香りが楽しみです。

―― 実は、ここでお知らせがあります。本日取材させていただいたタルイベーカリーさんと、これまで訪れたカタネベーカリーさん、ガーデンハウス クラフツさんのパンをセットにした特別な「東京モーニングパンセット」をBread Labさんとのコラボレーションで作りました。
こちらの詳細は、次回お届けします。お楽しみに。

タルイベーカリー
東京都渋谷区代々木4-5-13 B1

営業時間
9:00~19:00

Twitter
https://twitter.com/TaruiBakery

Instagram
https://instagram.com/taruibakery

( about DINER )

「どこで、だれと、なにを食べようか?」

DINERは「食事の時間」をテーマにしたウェブマガジンです。2014年春、Food & Design Postというニュースサイトとしてスタート。2016年春のリニューアルを経て、現在は東京の飲食店取材を中心に活動しています。2017年春には、ノンアルコール飲料ブランド「SHE LAUGHS」も始めました。