DINER ( Web Magazine )

September 2017

青森のローカルフードは、おつまみの宝庫。
「源たれ」に凝縮された甘辛文化に迫る!

category / Interview
( 2016/04/19 )

地方出身、東京在住のクリエイターに、
東京に来て「え、ナイの?」と驚いた
ローカルフードを聞く企画「TOKYO Nai Nai! 46」。

離れてみて、初めて気づく大切さ。
それは恋愛だけではないようだと思いながら、
北海道に続き、青森県出身のクリエイターを探しました。

今回お話を聞いたのは、青森県は下北半島の
むつ市から上京した、なかさとゆうみさん。

なかさとさんが調べてくれた青森料理のお店「鮮魚と地酒屋 漁介」で、
銘酒の「田酒」をたしなみながら、お話を伺いました。
さて、今日の「ナイもの探し」は何が見つかるでしょうか?

なかさとゆうみさんなかさとゆうみさん 青森県むつ市出身/東京都目黒区在住。職業は、グラフィックデザイナー/アートディレクター。デザイン会社勤務を経て、現在はフリーランスとして活動中。広告、企業CI、商品パッケージ、書籍などグラフィックデザイン全般を手掛ける。

なかさとゆうみさん

「源たれ」は一般家庭の普及率100%

― なかさとさん、はじめまして。
かなり、お酒好きのように映りそうな背景ですが。

なかさとさん よろしくお願いします(笑)。

― 今日は、青森県の代表として来ていただきました。

なかさとさん 私は青森の中でも、
本州の最北端にある下北半島のむつ市出身で、
青森代表と言うには、少しマイナーな地方かもしれません。
栄えているのは弘前市がある津軽地方か、八戸がある南部地方。
私が生まれたむつ市は、海に囲まれた人口6万人くらいの小さな町です。

― 海に囲まれているとなると、魚貝がおいしそうですね。

なかさとさん 海峡サーモンやイカがよくとれますね。
さっき、この店の店長さんは同じく下北半島の
大畑という地域の出身だと聞いたのですが、
その大畑では「サーモンレース」をやっていたり、
別の村では「烏賊様レース」なるものまであります。
プールにイカを泳がせて競わせるという。

― サーモンやイカのレースですか。
食材はかなり豊かな感じがしますが、
今日は青森の食を調べて、お土産を持ってきました。
まず、こちらの「スタミナ源たれ」というものなんですが。

なかさとさん ああ、源たれ!

― 「ゲンタレ」って言うんですね。
前回、北海道の「焼きそば弁当」をお土産にしたときも、
インタビューをした吉田さんが「ヤキベン」と略していて。
略しちゃうところに、愛情を感じますね。
源たれは、青森ではメジャーですか?

なかさとさん 普及率100%なんじゃないでしょうか。
一応、焼肉のたれなんですが、チャーハンや煮物などに、
数滴入れると味がまとまっておいしいんです。
子供は、卵かけご飯にかけて食べたり。

― 普及率100%とは、すごいですね。
あぁ、素材を見ると青森産のりんごと、にんにくが入ってますね。

なかさとさん そうなんですね。
いつのまにか自然と家にあったものだったので、
あまり深く考えたことはありませんでしたよ。
実家から定期的に送られてくるので、
今の家にも5~6本ストックがあります。

― ええ! じゃあ、お土産は持って帰ります(笑)。
さっき、店長さんにも「それなら、店にもたくさんあったのに」
って、言われたところです。

味噌貝焼き

ホタテ貝で海鮮をじっくりと焼く「味噌貝焼き」

― 源たれ以外に、東京に来てから初めて、
存在の大きさに気付いたローカルフードはありますか?

なかさとさん 「けいらん」を知っていますか?
あんこをくるんだ薄皮のお餅を、そばつゆで食べるんです。
お正月にもよく出るのですが、おすすめですよ。 

― 甘いあんこのお餅を、しょっぱい汁につけて?

なかさとさん そうです。
私の夫が兵庫県出身なのですが、
実家に来たときにおいしいって言っていました。
西の人でも大丈夫ということで、味は安心できるかと。

― 実家に気を使った可能性もありますね(笑)?

なかさとさん たしかに。
いやでも、本当においしいんです(笑)!
あとは、今日出してもらった味噌貝焼きもよく食べました。
貝やイカや海藻を味噌で煮て、最後に卵でとじて。
青森では「みそかやぎ」って発音します。

― 家でも貝で焼くんですか? 食器棚に貝が?

なかさとさん 家のどこかしらに貝はありましたね。
貝がない場合は、小さな土鍋か親子丼を作る鍋で作ります。
基本、甘くてしょっぱい味付けが好きなんですよ。
お菓子のポタポタ焼きもよく食べていました。
そんな甘辛文化が、この源たれに凝縮されて。

― あぁ、甘辛文化ゆえに、みんな源たれが好きなんですね。
もしや、源たれで育ったゆえの甘辛文化とか?
いやいや、話がまた源たれに戻ってしまったのですが。

なかさとさん 今日のお土産はぜひ持ち帰って、
一度、食べてみてください。

― これは試さずにはいられませんね。
ちなみに、こちらの漁介以外に、
青森にゆかりのあるお店を知っていますか?

なかさとさん 神田にあるお店なのですが、
ご当地酒場 青森県むつ下北半島」には行きました。
むつ市の回覧板に挟まっているお便りが置いてあるなど、
なかなか地元感が満載でしたよ。
それから、青森県出身の店長がやっている、
HEIDEN BOOKS」というホント雑貨のお店。
こちらは食のお店ではないのですが、
たまに青森にゆかりのある方のライブをやっていたりします。

なかさとさん

離れて気づいた、ローカルフードの実力

― ところで、なかさとさんが上京したのはいつですか?

なかさとさん 18歳のころです。
既にデザインの仕事を目指していたので、
高校卒業後に上京して専門学校に。

― 東京への憧れみたいなものは?

なかさとさん 高校を卒業したら漠然と東京一択でした。
進学先を決めるまで、東京へ行ったこともなく
テレビの中で見る知識しか無いという全く知らない街でしたが。

― 今はフリーランスで活躍されていますが、
その前にはデザイン会社に勤めていたのですか?

なかさとさん はい。4年間ずつ2つの会社に所属して。
2社目を退職したとき、最初は就活をしていたのですが、
何となく違和感を覚えるようになって。
そのタイミングで仕事が来るようにもなったので、
そのまま一人でやることになりました。

― 青森に帰ろうという気持ちはありますか?

なかさとさん 今は全くないですね。
やはり今の仕事を続けたいというのはもちろんですが、
離れてみて気づく良さって、あると思うんです。

― 離れてみて、どんなことに気付きましたか?

なかさとさん 地元にずっといたとしたら、
わざわざ郷土料理を食べたりしないと思います。
お正月に帰ると「ピザやグラタン作ろうか?」とか
聞かれるんですね。地元では、いつも魚だから。
いやいや、魚が食べたいよ!って。
今思うと、この甘じょっぱい味付けは、
お酒のつまみの宝庫みたいですけどね(笑)。

鮮魚と地酒屋 漁介

本日のお店「鮮魚と地酒屋 漁介」オーナー 野中涼介さん
下北半島の大畑出身です。
東京は、青森料理のお店は少ないですね。
お店がある高田馬場は「学生の街」という印象が強いですが、
実は一本道を離れると、少し大人な客層に。
青森の銘酒「田酒」は手に入りにくいことでも有名ですが、
ここでは日本酒の飲み放題コースに入っています。
そのほか味噌貝焼き、ほかではあまり食べられないイカの白子、
イカの中にゲソや漬物を詰めたイカ寿司など、
下北半島の郷土料理を楽しんでいただけます。
実は、もう一店舗、青森料理の店を出すことも計画中。
青森の料理屋で、東京で一番になりますよ。

鮮魚と地酒屋 漁介

場所 東京都新宿区高田馬場1-17-10 1F
営業時間 12:00~25:00(月~木)
17:00~4:00(金・土・祝前日)
定休日 日曜
公式サイト https://goo.gl/zGHZxb

( about DINER )

「どこで、だれと、なにを食べようか?」

DINERは「食事の時間」をテーマにしたウェブマガジンです。2014年春、Food & Design Postというニュースサイトとしてスタート。2016年春のリニューアルを経て、現在は東京の飲食店取材を中心に活動しています。2017年春には、ノンアルコール飲料ブランド「SHE LAUGHS」も始めました。