DINER ( Web Magazine )

June 2017

「好き」を「大好き」にするお金を考える。
Little Nap COFFEE STANDでコーヒーブレイク

category / Interview
( 2016/06/09 )

「クリエイターが幸せになるためのお金の使い方」を、
食にかかわる人とともに考える企画、フードとマネー。
第3回目は、Little Nap COFFEE STAND
濱田大介さんにお話を伺います。

今回のテーマは、「出会いとお金」。
濱田さんは「出会いや人との関わりのために、
どのようにお金を使っているのか?」を聞いてみました。

もちろん、人との出会いはお金では買えないことだとは思いますが、
そのような中でも、自らいい出会いを生み出すための
前向きな「出会いとお金」について、ヒントを探しに行ってきました。

Little Nap COFFEE STANDLittle Nap COFFEE STAND バリスタの濱田大介さんが2011年にオープンした、代々木公園沿いのコーヒースタンド。国内外からも多くの人が訪れるものの、地域の人を大切にして運営されているローカルなショップ。

Little Nap COFFEE STAND

「育てる」ためにお金を使う

― こんにちは。今日はよろしくお願いします。

濱田さん こんにちは。
どうですか、まずはコーヒーでも。

― ありがとうございます。
今回は連載の第3回目になるのですが、
もともとは「価値のあるお金の使い方は何か?」を問う企画でした。
でも、前回お話を聞いた三浦(武明)さんに
「そもそも、お金は価値があることと交換するための
道具にすぎないよね?」と、逆に質問をいただいて。
「たしかに!」という大きな気付きを得ながら、
今は「自分にとって価値のあることは何か」を考えているところです。

濱田さん 三浦先生(笑)。
タケちゃんとは同い年で、24歳からの付き合いです。

― そうなんですね。
高円寺のマーブルを立ち上げたお話を三浦さんに聞きましたが、
そのときに一緒に参加されていたと、別のインタビューで読みました。
でも、今日濱田さんにお話を聞きたいと思ったのは
三浦さんとつながりがあったからではなくて、
コーヒーの人』という本を読んだからなんです。

濱田さん ふうん?

― 今、見つめなおしたいと思っていた
「自分にとって価値のあることとは何か?」という課題と、
まさに同じ質問がそこに載っていて。
濱田さんは、その質問に対して“出会いじゃないですか?”と答えていました。
それで、何かヒントが得られるのではないかと思って。

濱田さん うーん、なるほど。

― まず、あらためて本日も、同じ質問をさせてください。
濱田さんにとって価値のあるものとは何ですか?

濱田さん そうねえ。
「育てられるもの」かなぁって、思っているのね。

― 育てられるもの、ですか?

濱田さん はい。好きから大好きになって、
大好きから愛しくなって、そして愛にいくっていう。
それが、一番素敵な「育ち具合」なんですが。
お金って、タケちゃんが言うところの道具だけれど、
その道具の中でも、いろいろな人の意識が入って
複雑な動きをする道具じゃないですか。

― たしかに、複雑な道具です。

濱田さん そんな道具に使われたくない。
使うなら育てるために使いたいと、思っています。

― 育てるためのお金とは、どういうことでしょうか?

濱田さん 自分の好きなことですら、
ただ「好き」なレベルなら、すぐに嫌いにもなってしまう。
「好き」から「大好き」になっていく過程があるんですね。
だから、お金を使うなら、自分の好きなものを育てるために使いたい。
一方で、それは大量生産/大量消費という
社会へのアンチテーゼでもあるのですが。

― スクラップアンドビルドな世の中に対するアンチテーゼですか?

濱田さん はい。一つのことを深めていますか?と。
マーケティングだけで作られて消費されて、
何かが育たないままに終わっていくことをつまらなく感じていて。
育てずに瞬間的に消費していく方法でお金を生むことに、興味がないんです。
プロセスを一つ一つ見つめることで生まれる価値があると思う。
この店だって、好きなことに集中するために始めたものです。

Little Nap COFFEE STAND

仲間たちと経済を育む

― 「育てる」とは、具体的にどのようなことをしているのですか?

濱田さん 例えば店は、仲間たちとDIYで一生懸命作っています。
時間が経ってボロボロになっても、それが価値になってくる。
好きなら手を動かして、どんどん育てれば次につながるんです。
そして技術が上がって、その延長線上に職人が生まれる。

― バリスタの仕事も同じですか?

濱田さん はい、毎日の積み重ねですね。
コーヒー一杯で400円、500円の世界だから、
本当に好きじゃないとバリスタはできないですよ。
ちなみに、うちはチップ制にもなっています。
今は熊本の支援のため募金にしているのですが、
レジのところにチップを置けるようにしていて、
お客さんが喜んでくれたら入れてくれるんですよね。
「お前のコーヒー、いけてるよ」って。

― それは、とてもうれしいですね。
店とバリスタの仕事以外で、育てるためのお金はありますか?

濱田さん ご飯を食べるときは友達のカフェに行きますし、
洋服やお酒も、自分のアイデンティティに合う仲間たちのものから買いたい。
経済とまでは言わないけれど、仲間の中で回したいという気持ちはありますね。
友達の洋服は少し高くても、丁寧に作っていて自分のスタイルに合うし、
お酒は一般のものなら3本飲めるところ、2本でもいい。
そうやって、なるべく仲間のところでお金を使いたいです。

― どんな仲間がいるのですか?

濱田さん 国内問わずにたくさんいるのですが、
例えば、サインペインターのNUTSがやっているOLD JOEの服は大好き。
ディティールに古い歴史を感じられてお店にも合うし、
彼らのイベントになると、コーヒーを淹れにも行きます。

Little Nap COFFEE STAND

出会いのはじまりは好奇心の中にある

― 少し話がそれますが、
友達のブランドの洋服を選べたら素敵だなあと憧れてもいるのですが、
実のところ、まだブランドをやっている友達がいないんです。

濱田さん それこそ、出会いですよね。

― 出会いたいです。

濱田さん 僕はお店をやっているから、向こうからやってきてくれます。
エスプレッソ一杯の出会いから、始まるわけですね。

― そう聞くと、私はここにエスプレッソを飲みに来る方です。
やはり将来的には、自分のところに誰かが来てくるような
場所を持つ人になりたいと感じます。

濱田さん いや、本来は「来てくれるかどうか」は関係ありませんよ。
僕はたまたま店をやっているから来てくれるだけで、
そうじゃなくても、どこにいたって出会えるじゃないですか。

― 関係ないですか?

濱田さん はい。公園を歩いていてもご飯を食べていても、
「Hey!What’s up?」みたいなところから出会いは始まると思う。
だから、場所を持っているかどうかではないんです。
例えば店には、フジロック前になると海外アーティストも来るんですが、
イアン・ブラウンがきても、気付かないスタッフもいます。
そうやって知らなければ通り過ぎてしまけれど、
自分が好きだったら、彼が「お前のコーヒー大好きだ」って言ってくれたら、
「あなたの音楽も大好きだ!」って伝えられる。それが出会いじゃないですか。

― 出会いの始まりは、好きなことを極めるということでしょうか。

濱田さん 極めるとか、そんな立派なものではないですよ。
もっと単純に、好奇心がわくというだけのこと。
そして、好奇心がわいた好きなものを育てていくこと。
自分が一番好きだと思えることに気概を持つということです。
それから、うちの店はコーヒーだけしか好きじゃない人は採用しないんですね。
好きなものがたくさんあって、それを織り込んでいける人がいい。
僕だって、そうやって好きなものがいっぱいあったから店ができたんです。
多分、そういうことの繰り返しなんですよ。

Little Nap COFFEE STAND

Little Nap COFFEE STANDで過ごした
本日の「価値あるお金の使い方」
¥650

  • アイスラテ
    細やかなチューニングを経て完成した一杯のエスプレッソ。
    天気が良い昼下がりには、アイスラテを注文
  • マフィン
    コーヒーに合うサイドメニューから、
    本日はマフィンを注文。
    少し温めていただくと、さらにおいしい。

自分の好きなことですら、
ただ「好き」なレベルなら、すぐに嫌いにもなってしまう。
「好き」から「大好き」になっていく過程を育てること。
そのために、お金を使うこと。
そこから出会いが生まれることに気付きました。

ただ、出会いの場所に行くだけでは駄目なんです。
自分の「好き」を育てることで、
何かのきっかけで誰かの「好き」と結ばれて出会いがはじまる。

さらに、そんな好奇心を育てる経験を経ていれば、
大量生産/大量消費の世の中に踊らされることなく、
自らの価値観でモノゴトを選べるようになるのかもしれません。

Little Nap COFFEE STANDのエスプレッソを飲みながら、
シンプルな目標が見つかったような気がしました。

Little Nap COFFEE STAND

場所 東京都渋谷区代々木5-65-4
営業時間 9:00-19:00
定休日 月曜
公式サイト http://www.littlenap.jp/

( about DINER )

「どこで、だれと、なにを食べようか?」

DINERは「食事の時間」をテーマにしたウェブマガジンです。2014年春、Food & Design Postというニュースサイトとしてスタート。2016年春のリニューアルを経て、現在は東京の飲食店取材を中心に活動しています。2017年春には、ノンアルコール飲料ブランド「SHE LAUGHS」も始めました。