DINER ( Web Magazine )

June 2017

FOOD and PEOPLE

Vol.001 オカズデザインさんに聞くFOOD&DESIGNの原点と未来

Vol.001 オカズデザインさんに聞くFOOD&DESIGNの原点と未来

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どうしたら相手の心に響くのか。
それが僕たちのキーワードなのかもしれない。

吉岡秀治さん、知子さん夫妻によるユニット、オカズデザインさん。「オカズ+デザイン」ではなく、由来は「ヨシオカズデザイン」の略語だそう。グラフィックデザイン会社としてそのキャリアをスタート。秀治さんがデザイナー、そのアシスタントをしていた知子さんが作る料理が次第に評判となり、デザインと料理を両立することに。当初はデザインと料理はもっと離れた形で活動していたそうですが、「今は料理すること、デザインすることが近づいてきた」と、秀治 さんは言います。

知子さんいわく「正直なところ、来た仕事を1つずつ誠実に返していくうちにこうなりました」と、あくまで自然体のお二人ですが、現在は日本を代表するフードユニットとして第一線で活躍。「熟成する料理」をテーマに掲げ、CM、映画、雑誌、各地のイベントと引っ張りだこの多忙な毎日。一方で、ライフスタイルに関するウェブサイトやグラフィックデザインも手掛けられています。

「料理とデザインが近づくと、どんな素敵なことになるのかしら?」と思いながら、オカズデザインさんに近況を伺いました。

食も、デザインも、伝えることだと思う

――オカズデザインさんと言えば、2007年頃からクラフト市などで出されていたレモネードの美しい色が印象的でした。

秀治さん 野外の音楽イベントに出店していたときに、数が必要で保存ができて、すぐに出せるものとして考えて生まれました。味の違い、色の美しさを楽しめる飲み物ですね。

知子さん 自家製のレモネードはとてもおいしい。さらにグラデーションで並んでいたら美しいのではないかなと思いました。私たちは「時間」をテーマにしているので、あらかじめ作って熟成させるというコンセプトにも合っていましたし。ただ、今は大きなイベントではあまりお出ししていないですね。

――キャリアを重ねるうちに、考え方が変わってきたのですか?

知子さん 考え方は、初めから変わりません。

食も、デザインも、伝えることだと思うんです。レモネード1つ出すにも、どう出すかで大きく変わります。どうしても1000杯、1500杯と数を求められてしまうと、接客がこなす感じになってしまい、これは違うなと。ありがたいことに楽しみにされている方も多いので、私達の店「カモシカ」では季節をとわずご用意しています。

器は、日常になることが一番面白い

――秀治さんはデザイナーさんですが、お料理の仕事をされたときに新しいインスピレーションを感じることはありますか?

秀治さん 去年、陶芸家の吉村和美さんの展示をしたのですが、とても繊細な緑色をテーマにしました。この緑の器に、クレソンなどグリーンの料理をのせるとどこかグラフィカルで、見たことのない不思議な印象の料理になったりするんです。自分たちがよく使うサイズ、盛りやすいものを基本にして、たくさんの話し合いを重ねて作っていきました。

知子さん 作家さんとは2~3年くらいかけてじっくり話し合いながら、もの作りをします。恋愛に似ていますね。盛り上がってぽんぽん話が進む時もあれば、なぜか話がかみ合わない時もある。そういうときは少し間を置いて。「お互いじゃないとできないものは何だろう?」と、話し合って作っていきます。

――さまざまな作家さんとのコラボレーションで、月に一度アトリエで企画展を行われていますが、そのきっかけは何ですか?

知子さん 私達は料理家になろうと思ってなったわけではなく、来た仕事をひたすら誠実に返すことでここまでやってきました。今はありがたいことに、料理の仕事の依頼がたくさんあるのですが、来た仕事を請けるだけではなく、自分たちから発信することをそろそろやってもいいかなと思いました。

――こんなに近くでお料理を作っていただけて、もてなされるというのは嬉しいです。

知子さん 料理用の仕事場があるので、この空間を大事にしています。空間も含めて料理であり、もてなしだと思うので。やっと去年くらいから、ここはそういった場所だということが伝えられてきたのではないかなと思います。出張して料理するのは勉強になるのですが、どうしても非日常的なものになってしまう。器に料理を盛り、実際使ってもらって、棚に収納している佇まいも見られる。その器の日常を見てもらえることが嬉しいですね。

――今後のビジョンはどのように考えていますか?

知子さん まだ実現できるか分からないですが、このアトリエは残しながら、いずれはお水がきれいなところに行きたいと思っています。料理は突き詰めていくと、お水に行きつくので。水がきれいなところで仕込んだ保存食を東京に持って来たり、東京で出会った人を別の土地で紹介したり。そういうことを始めたいなと思っています。

――表現をしたり、伝えることがテーマなのですね?

知子さん 表現というとちょっと違うかもしれない。器や食材、素晴らしい作り手を知る機会に恵まれているので、それを伝えるのが役割だと感じています。デザインも、そういうことだと思うんです。自分を主張するのではなくて、クライアントさんの頭の中にあるものを目に見える形にしていく。料理も、作りたい味にもっていくのではなく、どうしたら素材を最大限に活かせるか追求することだと思います。

秀治さん 和食が好きな相手をもてなすとしても、懐石のように静かで緊張感があるコース料理を出すのか、肉じゃがやお浸しのような日常の料理を大皿で出してくつろいでもらうのか、或いはその中間なのか。食べ物もデザインも、どんな表現をしたら心に響くのか考え抜く、それが幹のように中心にある。どうしたら相手に一番心地よくなってもらえるのか、それが僕たちのキーワードなのかもしれないなと思います。

FOOD and PEOPLE Vol.001

( about DINER )

「どこで、だれと、なにを食べようか?」

DINERは「食事の時間」をテーマにしたウェブマガジンです。2014年春、Food & Design Postというニュースサイトとしてスタート。2016年春のリニューアルを経て、現在は東京の飲食店取材を中心に活動しています。2017年春には、ノンアルコール飲料ブランド「SHE LAUGHS」も始めました。