DINER ( Web Magazine )

September 2017

Vol.003 モコメシさんに聞く、フードデザイン

Vol.003 モコメシさんに聞く、フードデザイン

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大切なのは、どういう食べ方と終わり方をするか。
すべてのケータリングがかっこいい必要はないと思うんです。

フードデザイナー、モコメシこと小沢朋子さん。「食べるシチュエーションをデザインする」をコンセプトに、ケータリングやメニュー開発のほか、ワークショップなども積極的に開催。最近では、竹尾ペーパーショウにおいて「SUBTLE」のテーマに合わせたケータリングを行ったのもモコメシさんです。

おいしい食事の提供はもちろんのこと、過去にはインテリアデザイナーとしての経歴もあるゆえ、ときには工具を現場に持ち込み、大掛かりなディスプレイまで手掛けてしまうことも。また、2013年からは、VISION GLASSをはじめとしたインドの生活道具を日本に輸入。そのブランディングから販売までを行っています。食・道具・空間。多彩なジャンルに強みを持つ一方で、さまざまな場面で伝わってくる一本芯の通ったストイックな姿勢。彼女の仕事に共通して存在する「何か強く光るもの」を探しに、アトリエを訪れました。

interview

興味をプラスしていくデザインワーク

――小沢さんが、仕事を通して大事にしていることは何ですか?

自分の興味と、相手のやりたいことを掛け合わせることです。作家ではなく、お客様ありきの仕事なので。いろいろなケータリングをやると、「バリエーションは、どのように思いつくのですか?」と聞かれるのですが、答えは簡単なこと。お客様によってやりたいことが異なるからです。お客様の希望をヒアリングして、そこに自分がずっと変わらずに好きでいることや興味、知識、テクニックをプラスしていく。デザインワークというのは、そういうことだと思います。

――どういったオーダーが多いですか?

モコメシだったら、何かやってくれるんじゃないかって(笑)。具体的なオーダーよりも、こういった相談から始まるケータリングの方が私自身も楽しいです。

――オーダーに対して、どのように提案していくのですか?

ウェディングだったら、素材にこだわりたいというお客様もいれば、見せ方にこだわりたい方もいる。「そもそも論」と言っているのですが、例えばお客様が「壁を使いたい」と言ったら、「そもそもどうして壁なのですか?」とヒアリングしていく。そうすると「スペースを広く使いたい」とか、「お客様をびっくりさせたい」とか、「ギャラリーの様な空間にしたい」といった、壁を使う理由が分かってきます。そしてさらに聞き進めると、その人たちが本当に目指していることが見えてきます。インテリアデザイナーのときには、常に「なぜその形になるのか考えろ」というストイックな事務所にいたので、その影響はあるかもしれません。

食べ物が主役ではなく、コンセプトがどう伝わるか

――提案時には、スケッチを描いたりするのですか?

スケッチを描いたり、イメージ写真を見せたり。いろいろな方法でお互いのイメージを共有していきます。図面を見せても分かる方であれば、図面で説明することもあります。

――ディスプレイも制作してしまうと伺いましたが。

ケータリングなのに、なぜか工具のインパクトとドライバーを持っていくという(笑)。テーブルの上だけに限らず、私自身でできることはなんでもやる、というスタンスです。そのうち舞台美術屋さんともコラボしたいと考えています。

――お客様のご要望にプラスする、モコメシさんの「好きなこと」は何ですか?

一つは、「ハリボテ」ではないもの。時間軸の話になりますが、最初だけがキレイで、時間が経つにつれ廃れていくケータリングは、ハリボテのような気がするんです。もう一つは、納得感。

レセプションでのケータリングでは、自分のフードがイベントの中でどういう役割を担うのかを考えています。5月に開催された『竹尾ペーパーショウ』では、「SUBTLE」というテーマが掲げられていたのですが、そのテーマに合わせてペラペラのサンドイッチを作りました。ほかの場所では「ペラペラのサンドイッチ?」と思うかもしれないけれど、この場では「なるほどね」と納得してもらえました。食べ物が主役ではなく、コンセプトがどう伝わるかが大事。「おいしい」ももちろん大切ですが、この「納得感」を大切にしています。「このレセプションだから、こうなのね」って。

WORK 01絵画のように食べ物を飾る
S様ウェディング

2014

S様ウェディング

TABLOIDで開催されたウェディングパーティでのケータリング。依頼主からの相談は「壁を使いたい」ということからスタート。
「壁にかけるといっても、貼る、吊るすなどいろいろな方法があって悩みました。人数は150人ということで、ケータリングとしてはそれほど多い量ではなかった。そこで、壁を区切ったらいいのではないかと思ったんです」
新郎新婦の職業が建築関係だったため、図面を見せながらイメージを共有。「最初はもっと正方形のような形だったのですが、花の見積もりをとったころ、二次会にはないなと思う金額になってしまって。そこで横長のレイアウトに変更しました」
レイアウトを横長にしたことで、スケール感は保ちつつも予算削減にも成功。工具のインパクトとドライバーを会場に持ち込み、現場で木枠を施工。白い壁に、まるで絵のようにフードをディスプレイした。
「こういった壁の使い方は初めてでどうなるかと思いましたが、面白かったですね。このときも”モコメシなら何かやってくれるだろう”というオーダーでした」

WORK 01

WORK 02食べ終わった場所に花を生ける
坂本さんのビールとモコメシ

2010

坂本さんのビールとモコメシ

独立したばかりの時期に開催した自主イベント。参加者は絵が描かれたお皿から好きなものを選び、食べる。食べ終わるとお皿をテーブルから剥がし、その下から食べ終わったお皿の絵が現れます。その場所に花を挿していくことで「満足の花が咲く風景」ができあがるというコンセプト。
「これは別に、絵を描きたかったわけではないんです」と、小沢さん。では何がやりたかったのかというと、それは「学生時代からケータリングをやってきて感じていた、フラストレーションに対する模索」だったそう。
「パーティは始まりが最も美しいけれど、その後は夢中になるあまりゴミや食べかけのお皿が放置されていく。こういう景色を作りたくてケータリングしているんじゃないと思ったんです。それなら、食べ終わったときに花を生ける。そうすれば、形は変化するけれど、パーティが終わったときにも新たな完成系が生まれるのではないかなと」
展開されたのは、時間が経つにつれて変化する、インスターレションのようなフードイベント。「最初から最後まで、美しく保つためにはどうしたらいいのかなと考えて。時間軸を通して変化していくという、私の一つのテーマが生まれた原点です」

WORK 02

WORK 03横浜工場地帯の景色とリンク
art night cruise

2011

art night cruise

クルーザーの上で行われたアートイベントでのケータリング。横浜港から出て、工業地帯を回ってくるというナイトクルージングのフードを担当。
「フードを白い紙に包み、その横にガラスのシリンダーを置いておくようにしました。シリンダーは照明で照らされていて、食べ終わった後に出る白い紙は、この中に入れていただきます」と、小沢さん。
紙は透けるような質感で、時間が経つにつれてぼんやりと明るくなり照明器具のような役割に変化する。また、机に仕込まれたLEDが、街の灯りのように光る。
「これにもいろいろなストーリーがあります。言ってみれば、真ん中にゴミ箱が置いてあるようなものですけどね。会場の片隅に申し訳なさそうに置かれているのではなくて、テーブルの真ん中に置いてあるという。そこに白い紙を入れていくことで、横浜港から出て、工場地帯を回ってくるパーティ終盤の景色を表現しているんです」。
食べて、捨てることで感じられる、自然な時間の流れ。こちらもまた、小沢さんの時間軸についての考察とコンセプトが見えるお仕事。

WORK 03

WORK 0410円引きと半額シールの重ね貼り
みんなのスーパーマーケット展

2013

みんなのスーパーマーケット展

47都道府県の地元スーパーのアイテムが集結する展示のレセプションでのお仕事。 「キュレーターの森井ユカさんが感じているスーパーの面白さが、より伝わるようにと考えました。最初の打ち合わせでは、ご当地の素材で何かを作ろうかなどと考えていたのですが、話をしていくうちに森井さんが感じている魅力はそこではないと気づいて」。
では何がポイントだったのかというと、それは「パッケージと日常にひそむワクワク感」だったという。方向転換した小沢さんが決めたテーマは、お惣菜。
「パッケージとバーコード、値引きシールを作りました。そして、時間が経つにつれて値引きシールを貼っていく。お金を払うわけではないのですが、そこからコミュニケーションが生まれる。そこに森井さんが感じているワクワク感が伝わればいいなと思って」。
思いに寄り添いながらも、エッジを効かせた食の演出。展示の印象はより強く、来場者の心に残ったに違いない。「すべてのケータリングがかっこいい必要はないと思うんです。大切なのは、どういう食べ方と終わり方をするか。外せなかったのは、10円引きシールと半額シールの重ね貼りですね(笑)」

WORK 04

WORK 05鞄屋さんの試作品でディスプレイ
SPEAK EAST!

2010

SPEAK EAST!

地元である台東区のショップが開催した合同展示会のオープニングパーティ。「ものづくりの街には、完成した商品だけじゃなくて、余った素材や試作品がたくさんある。そういうものを見せましょうと提案をしました」
そんな小沢さんが作ったのは、商店街の煮豆、豆腐、パン、和菓子をアレンジしたフィンガーフード。
「街の職人とおかずやさんってリンクしているんです。職人さんは夕方まで働いて、商店街でお豆腐屋さんの豆腐や、お惣菜屋さんのさんまのかば焼きを買って食べるとか」
そんなつながりを表現するため、家具屋さんの木の端切れ、鞄屋さんの試作パーツを使いながら、この街でしか作れないディスプレイを作成した。
「モコメシがお豆をおいしく炊くことに意味があるのではなくて、大切なのはこの土地にあるものを使うこと。料理人は、いかに自分の手でおいしくするかが一つのプレゼンテーション。だから、煮豆を買ってくることはない。私はデザイナーとしてものを作っているんです。煮豆屋さんも、まさか自分の煮豆がこう使われるとは思っていなかったと思います(笑)」

WORK 05

FOOD and PEOPLE Vol.001

Back number

( about DINER )

「どこで、だれと、なにを食べようか?」

DINERは「食事の時間」をテーマにしたウェブマガジンです。2014年春、Food & Design Postというニュースサイトとしてスタート。2016年春のリニューアルを経て、現在は東京の飲食店取材を中心に活動しています。2017年春には、ノンアルコール飲料ブランド「SHE LAUGHS」も始めました。