DINER ( Web Magazine )

June 2017

本を作りにインドへ。モノづくりの旅レポート vo.l03
『インドのハンドメイドペーパー工場02』

category / Report
( 2015/04/07 )

インドのハンドメイドペーパー

フォトグラファー/アーティストの原田恵梨さんによるコラムも第3回目を迎えました。アクセサリーブランド「pahi」とコラボレーションで、インドでの本づくりにチャレンジしている原田さん。今回も、現地から臨場感あふれるエピソードを届けてくれました。「世界が日本の和紙に注目しているように、その土地でしか作っていない紙を使おう」という気持ちから訪ねたのは、インドで一番大きなハンドメイドぺーパー工場。今回は特別に撮影許可をいただき、工場内の様子を届けてくれました。

こんにちは、原田恵梨です。前回はインドの紙についてご紹介する前に紙面が尽きてしまいましたので、今回は足早に主題からお伝えしたいと思います(笑)。

インドのリサイクル紙は、コットンを使用し手作業で作られています。顔料もオーガニックにこだわり、地球環境にも配慮しているようですが、真相は謎です。「こんな彩度の高い黄色が自然界の色であるの?」と目を疑いもします。私が友人の紹介で訪ねたのは、ジャイプルのサンガネールという工業・工場地帯にあるA.L.ペーパーハウスという会社。従業員500人というインドで一番大きなハンドメイドペーパー会社で、主にアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアにハンドメイドペーパーやその紙で作ったプロダクトを輸出しています。

サンガネール工業・工場地帯のサンガネール

インドには卸していないのですが、今回は友人の紹介だからということで、特別に私の小さなプロジェクトに協力してくださいました。工場内は機密が多くほぼ撮影禁止でしたが、特別に3分程許可がおりたため工場内の一部の雰囲気をお届けします。目の前に広がる色とりどりのリサイクルコットンの山。男性が二人掛かりで、木の枠をオレンジ色の水に入れる作業をリズム良く繰り返しています。力も忍耐もいる仕事。紙が一枚一枚できあがっていきます。

5一枚ずつできあがるハンドメイドペーパー

そんな紙選びから、話は現在に戻ります。今はA.L.ペーパーハウスで選んだ紙を印刷所に持ち込み本機校正にかけたところ。しかし、この時間をかけて探した紙が、印刷機には使用不可という判断が下されました(!)。確かにテストプリントした紙を見てみると、文字がぼやけてしまっていて、これでは量産に進めません。そもそもなぜ、紙選びと印刷所が連携できていないのか、疑問に思った方もいらっしゃるでしょうか? 実はこのプロジェクト、大きな声では言えませんが、なかなかの苦労をしているのです。

インドのハンドメイドペーパー量産段階で作業が降り出しに……涙

プロジェクト当初は、pahiのデザイナーが信頼を寄せているリキシャドライバーのおじさんに紹介していただいた、とある印刷会社でダミーブックの制作や面付けというレイアウトなどの作業を進めていました。しかしこの会社、まず社内に英語が話せる人がいない、外国人との取引は初めてという地域密着型。主にウエディングパーティーの招待状とDTP関連の案件をこなしているようです。打ち合わせのすっぽかしは当たり前という状況に怪しんではいたのですが、結果的に外注先への支払いも遅れるほどファイナンス経営がなっていない会社なのでした。インドの会社ではサンプル制作自体はタダで引き受けるところもあるようですが、前金として50~60%支払う会社が多いです。

インドのハンドメイドペーパー気を引き締めてポジティブ思考で頑張ります

実は、今回の渡印はこの会社が責任を持って私の本を仕上げるのか、または案件がキャパオーバーなのであれば支払済の前金の返却を求めたいという目的がありました。結果として、この会社での作業をあきらめ、再び友人の紹介で別の印刷会社にお願いをすることに。しかし、新しい会社は前会社の下請け会社という事実が発覚。そして本機校正が終わり、いざ量産という段階で「契約の値段ではできない。冊数は契約の半分、一冊あたりの値段は2倍」という見積を突きつけて来たのです。

現在は、「支払済の金額をキャッシュで私の手に返してから、この条件で進めましょう」とキープしつつも、他会社をあたっている最中です。ここではビジネスにおいて日本の常識は通用せず、契約書にサインしたところで何の効力もありません。ただの紙切れでは契約違反することに罪の意識は薄いのです。これ以上失敗は繰り返せない。良いものを仕上げて帰国します。

さて、気分を変えて、次回はインドの伝統的な技法、ブロックプリントについてご紹介します。今回の本は、表紙にこのブロックプリントを施しているのです。お楽しみに。

原田恵梨

原田恵梨
グラフィックデザイナー、フォトグラファー、アーティスト。現在、アクセサリーブランドpahiとのコラボレーションでアート本を作成するためインドに滞在中。

自己紹介
私は在日韓国人3世として日本に生まれた背景もあり、ボーダー(国境)やアイデンティティーとは何かを考える機会は多く、「生まれ育った環境の外の世界を知りたい」と、若いころより一人旅をしてきました。学生時代は日本画、服飾デザイン、グラフィックデザインを学び、現在はグラフィックデザイナー、フォトグラファー、アーティストとして活動しています。

( about DINER )

「どこで、だれと、なにを食べようか?」

DINERは「食事の時間」をテーマにしたウェブマガジンです。2014年春、Food & Design Postというニュースサイトとしてスタート。2016年春のリニューアルを経て、現在は東京の飲食店取材を中心に活動しています。2017年春には、ノンアルコール飲料ブランド「SHE LAUGHS」も始めました。